初めての選挙、街で見かける「選挙運動」って何?どんなルールがある?
はじめに
初めての選挙を控え、少しずつ政治や選挙に関心を持ち始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。選挙期間が近づくと、街中で候補者の名前を聞いたり、ポスターを見かけたりすることが増えてきます。これらは「選挙運動」と呼ばれる活動です。
選挙運動は、候補者が有権者(私たち投票する人)に自分の考えや政策を知ってもらい、「私に投票してください」とお願いするための大切な機会です。しかし、選挙運動には、誰もが公平な条件で活動できるように、様々なルールが定められています。
この記事では、初めて選挙に触れる方にも分かりやすいように、選挙運動にはどのような種類があるのか、そしてどのようなルールがあるのかを解説します。これらの知識を持つことで、選挙期間中に目にする様々な活動が何を意味するのか、そして候補者の情報をどのように受け取れば良いのかが、より明確になるでしょう。
選挙運動とは何か
選挙運動とは、特定の選挙で、特定の候補者を当選させるために、投票を得る目的で行われる活動全般を指します。簡単に言えば、候補者が有権者に自分を選んでもらうために行うアピール活動のことです。
一方、選挙運動に似た言葉に「政治活動」というものがあります。政治活動は、より広い意味を持ち、特定の選挙に関わらず、政治上の目的を達成しようとする活動全般を指します。例えば、特定の政党の主義・主張を広める活動や、政策課題について意見を表明する活動などがこれにあたります。
選挙運動は、「公示(告示)日」から「投票日前日」までの限られた期間にしか行うことができません。この「公示(告示)日」というのは、選挙を行うことが公式に発表される日のことです。国政選挙の場合は「公示」、地方選挙の場合は「告示」と呼ばれますのが、どちらも同じ意味です。この期間以外に、投票を得る目的で特定の候補者への投票を呼びかける活動を行うことは、原則として禁止されています。
どんな選挙運動があるのか
選挙運動には様々な方法があります。主なものをいくつかご紹介します。
- 街頭演説 候補者やその応援者が、駅前や広場などでマイクを使って自分の考えや政策を訴えるものです。多くの人が行き交う場所で行われるため、候補者の声や人柄を知る機会となります。
- 選挙ポスター 候補者の顔写真や名前、所属政党などが記載されたポスターを、定められた掲示板に貼るものです。有権者が候補者を一覧で確認できるようになっています。
- ビラ・葉書 候補者の情報や政策を記載したビラ(チラシ)や葉書を、有権者に配布するものです。配布できる枚数や方法には制限があります。
- インターネット等(ウェブサイト、SNSなど) 候補者個人のウェブサイトやブログ、X(旧Twitter)、Facebook、InstagramなどのSNSを利用して、政策を伝えたり、活動を報告したりするものです。インターネットを使った選挙運動は、公示(告示)日以降であれば、原則として自由に行うことができます。ただし、未成年者による選挙運動への参加には一部制限がありますので注意が必要です。
- 新聞広告・テレビ/ラジオ放送 候補者の情報や政策を新聞広告に掲載したり、テレビやラジオの政見放送で訴えたりするものです。費用がかかるため、主に政党や大きな選挙の候補者が利用します。
- 電話 候補者やその関係者が、有権者に電話をかけて投票をお願いする活動です。
選挙運動にはなぜルールがあるのか、主なルールとは
選挙運動には、誰もが公平な条件で選挙に臨み、お金の力や特定の勢力の力で選挙の結果が歪められないように、様々なルール(規制)が設けられています。これは、選挙の公正さや自由を守るために非常に重要です。
主なルールとしては、以下のようなものがあります。
- 期間の制限: 上記で触れたように、選挙運動は公示(告示)日から投票日前日までしかできません。この期間外に特定の候補者への投票を呼びかけることは「事前運動」として禁止されています。
- 費用の制限: 候補者が選挙運動に使えるお金の額には上限が定められています。これは、お金持ちの候補者だけが有利にならないようにするためです。
- 禁止されている行為:
- 買収: 投票してもらう目的で、有権者にお金や物を渡すことは最も重い犯罪の一つです。受け取った側も罰せられる可能性があります。
- 戸別訪問: 原則として、候補者や運動員が各家庭を訪問して投票をお願いすることは禁止されています。これは、各家庭の平穏を守るためや、特定の家庭にだけ集中的なアピールがなされるのを防ぐためです。
- 署名運動: 選挙運動のために署名を集めることは禁止されています。
- 特定の制限: 街頭演説の回数や時間、ポスターを貼れる場所、ビラを配れる場所や方法など、細かなルールが定められています。
これらのルールは、「公職選挙法(こうしょくせんきょほう)」という法律で定められています。ルールを破った場合には、罰則が科されることがあります。
若者が選挙運動について知っておきたいこと
初めて選挙に触れる皆さんが、選挙運動について知っておくと役立つ点をいくつかご紹介します。
- SNSでの発信: インターネットを使った選挙運動は原則自由ですが、誰かを応援する投稿や、投票を呼びかける投稿が「選挙運動」にあたる場合があります。未成年者が選挙運動を行うことには一部制限があるため、特にSNSでの発信には注意が必要です。何が許されるのか、最新の情報(総務省などの公式情報源)を確認することが大切です。
- 情報源として: 選挙運動は、候補者がどのような人なのか、どのような考えを持っているのかを知るための重要な情報源です。街頭演説を聞いてみたり、候補者のウェブサイトやSNSを見てみたりすることで、投票する際の参考になる情報を得られるでしょう。ただし、候補者の情報はあくまでアピールであるという視点を持ち、他の情報源(選挙公報やニュースなど)と合わせて判断することが推奨されます。
- ルール違反に気づいたら: 明らかにルールに反する行為を見かけた場合は、選挙管理委員会などに情報提供することもできます。
まとめ
選挙期間中に街で見かける「選挙運動」は、候補者が有権者に自分を知ってもらい、投票してもらうための一連の活動です。この活動は、選挙の公平さや自由を守るために、様々なルール(公職選挙法)によって厳しく制限されています。
街頭演説やポスター、インターネットなど、様々な方法で行われる選挙運動は、候補者の考えや人柄を知るための大切な機会となります。しかし、その活動には「公示(告示)日から投票日前日まで」という期間の制限や、買収・戸別訪問の禁止など、守らなければならないルールがたくさんあります。
初めて選挙に行く皆さんも、選挙運動について基本的な知識を持っておくことで、選挙期間中の情報に適切に向き合い、候補者を比較検討する手助けとなるでしょう。分からないことがあれば、選挙管理委員会や信頼できる情報源で調べてみてください。
この記事が、皆さんが安心して政治や選挙に触れるための一助となれば幸いです。