初めての選挙、ネットでの情報収集やSNS発信はどこまでOK?インターネット選挙運動のルールと活用法
はじめに:初めての選挙とインターネット
初めて選挙に行くことになったとき、多くの情報が飛び交う中で、「どこから情報を得ればいいのだろう」「インターネットやSNSで政治について発信しても良いのだろうか」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特にインターネットやスマートフォンが身近な存在となっている今、選挙とインターネットの関係は気になるところではないでしょうか。
このページでは、初めて選挙に臨む方が知っておきたいインターネットを使った選挙活動、いわゆるインターネット選挙運動のルールや、インターネットを賢く情報収集に活用する方法について分かりやすく解説します。これらの知識を得ることで、安心して政治に触れ、投票先を判断するための情報収集に役立てていただければ幸いです。
インターネット選挙運動とは?
インターネット選挙運動とは、選挙期間中にウェブサイトやブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、動画共有サイト、電子メールなどを利用して行う選挙活動全般を指します。
かつて、日本では選挙期間中のインターネットを使った選挙運動は原則として禁止されていましたが、時代の変化に伴い、2013年に公職選挙法が改正され、インターネット選挙運動が解禁されました。これにより、候補者や政党はもちろん、私たち有権者も一定のルールのもとでインターネットを使った選挙運動や情報発信を行うことができるようになりました。
インターネット選挙運動が解禁された背景には、多様な形で有権者が政治に参加できるようにすることや、候補者や政党がより多くの人々に政策や考え方を伝えられるようにすること、そして有権者が選挙に関する情報を得やすくすることなどが挙げられます。特に若い世代にとっては、インターネットやSNSは日常の情報収集・発信のツールであり、選挙に関する情報に触れる重要なきっかけとなり得ます。
- インターネット選挙運動: 選挙期間中にインターネットを使って行われる選挙活動全般のことです。
インターネット選挙運動:何ができて、何ができない?
インターネット選挙運動は解禁されましたが、どのようなことでも自由にできるわけではありません。公職選挙法によっていくつかのルールが定められています。初めて選挙に関わる方が特に知っておきたい基本的なルールを見てみましょう。
合法な活動(できることの例)
- ウェブサイトやブログ、SNSでの情報発信: 候補者や政党は、自身のウェブサイトやブログ、Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、LINEなどのSNSアカウントを通じて、政策や日々の活動、政見などを発信することができます。 私たち有権者も、特定の候補者や政党を応援する内容を自身のブログやSNSアカウントに投稿したり、候補者や政党の投稿をシェアしたりすることが原則として可能です。ただし、後述する禁止事項に該当しない範囲での活動となります。
- 動画共有サイトでの動画公開: YouTubeなどの動画共有サイトに、政見放送の動画や活動報告、候補者や政党のメッセージなどを投稿することができます。
- 電子メールでの情報提供: 候補者や政党は、あらかじめ同意を得た方に対して、選挙運動に関する電子メールを送ることができます。ただし、誰にでも無差別にメールを送ることは制限されています。
違法となる活動(できないことの例)
- 選挙期間中の有料インターネット広告: 選挙期間中(公示日・告示日から投票日前日まで)に、特定の候補者や政党の名前を出して投票を呼びかけるような有料のインターネット広告を掲載することは禁止されています。これは、資金力によって選挙の結果が左右されることを防ぐためです。
- なりすまし行為: 他の候補者や政党、あるいは有権者になりすまして、虚偽の情報や誹謗中傷を含む情報を発信することは重大な違反です。
- 虚偽情報の流布: 特定の候補者や政党、あるいは選挙制度について、事実と異なる情報を意図的に広めることは禁止されています。
- 未成年者(18歳未満)の選挙運動: 選挙運動は、原則として18歳以上の方が対象となります。未成年者がインターネットを使って選挙運動を行うことは、親や保護者の同意があっても原則として禁止されています。
- 公職選挙法に違反する内容の発信: 買収や利害誘導、脅迫など、公職選挙法で禁止されている行為をインターネット上で行うことや、そうした行為を勧めるような内容を発信することはもちろん違法です。
これらのルールは、インターネットを使った選挙運動が公正かつ適正に行われるようにするために定められています。特にSNSなどを使う際は、自分が発信する情報がルールに違反していないか注意することが大切です。不安な場合は、特定の候補者への投票を呼びかけるような踏み込んだ表現は避けるのが無難かもしれません。個人的な感想や、候補者・政党の情報をシェアする程度であれば、多くの場合問題ありません。
- 公職選挙法(こうしょくせんきょほう): 国会議員、地方公共団体の議会の議員、首長などの公職選挙に関するルールを定めた日本の法律です。
- 公示日(こうじび)/告示日(こくじび): 国政選挙の場合は公示日、地方選挙の場合は告示日と呼ばれ、選挙期間が正式に始まり、候補者が立候補の届け出をする日です。この日から投票日前日までが選挙運動期間となります。
- 有権者(ゆうけんしゃ): 選挙において投票する権利を持っている人のことです。日本では原則として満18歳以上の日本国民が有権者となります。
- SNS: ソーシャルネットワーキングサービスの略称で、インターネット上で人々の交流を支援するサービスのことです。Facebook, X, Instagram, LINEなどが代表的です。
- 誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう): 根拠のない悪口や嘘を言って、他人の名誉を傷つけたり信用を落としたりすることです。
ネットを情報収集に活用しよう
インターネットは、候補者や政党の情報を得るための非常に便利なツールです。初めて選挙に行く方が、自分に合った投票先を見つけるために、どのようにインターネットを活用できるかをご紹介します。
- 候補者・政党の公式サイトや公式SNSアカウントをチェックする: 最も直接的な情報源です。候補者や政党がどのような政策を掲げているのか、どのような活動をしているのかを知ることができます。動画や写真なども豊富に掲載されている場合があります。
- 選挙管理委員会やメディアの特設サイトを見る: 選挙期間中、選挙管理委員会(選管)のウェブサイトや、新聞社、テレビ局などのメディアが選挙に関する特設サイトを開設することがあります。これらのサイトでは、立候補者の一覧や政党ごとの主な政策、出口調査の結果など、信頼性の高い情報が集約されていることが多いです。
- 動画やライブ配信で演説や討論会を視聴する: 候補者や政党がインターネットで演説を配信したり、候補者同士が政策について討論する様子がライブ配信されたりすることもあります。文字情報だけでなく、候補者の話し方や人柄に触れることで、より深く理解できることがあります。
- インターネット上の選挙公報や政見放送を見る: 選挙期間中は、候補者の氏名や経歴、政見などが記載された選挙公報が各家庭に配布されますが、インターネット上でも公開されることがあります。また、テレビやラジオで行われる政見放送も、後からインターネットで視聴できる場合があります。
- SNSでの議論や有権者の声に触れる: SNS上では、様々な立場の有権者が政治や選挙について意見を交換しています。多様な視点に触れることは参考になりますが、中には不確かな情報や個人の感情的な意見も含まれている可能性があるため、情報の真偽を慎重に見極めることが重要です。
インターネットで得られる情報は多岐にわたりますが、だからこそ、情報の正確さを見極める力が求められます。信頼できる情報源(候補者・政党の公式、公的機関、主要メディアなど)を参考にすることをお勧めします。複数の情報源を見比べることも、理解を深める上で有効です。
- 選挙管理委員会(せんきょかんりいいんかい): 選挙に関する事務を管理・執行するために、国や地方公共団体に設置されている機関です。公正な選挙が行われるように様々な業務を行います。
- 選挙公報(せんきょこうほう): 選挙の際に、候補者の氏名、経歴、政見などを記載して、各家庭に配布される印刷物です。
- 政見放送(せいけんほうそう): 選挙の際に、候補者や政党がテレビやラジオで自らの政策や主張を述べるための放送です。
まとめ:インターネットを味方につけて、政治をもっと身近に
インターネット選挙運動の解禁により、私たちはインターネットを通じてこれまで以上に手軽に選挙や政治に関する情報に触れ、また、ルールを守りながら自分の意見を発信できるようになりました。
インターネットは、初めて選挙に行く方が「どこから調べればいいか分からない」「政治の話は難しそう」と感じる壁を低くしてくれる可能性を秘めています。候補者や政党の公式サイトやSNSを覗いてみたり、選挙特設サイトで情報を集めてみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、インターネット上の情報全てが正しいわけではありません。得た情報が信頼できるものかどうか、複数の情報源と見比べて確認する習慣をつけることが大切です。
ルールを理解し、インターネットを賢く活用することで、政治や選挙をもっと身近に感じ、あなたの「一票」を投じる際の参考になるはずです。分からないことや不安なことがあれば、お住まいの地域の選挙管理委員会に問い合わせてみるのも良いでしょう。インターネットを味方につけて、あなたの政治参加の第一歩を踏み出してください。