一番身近な選挙「市町村議会議員選挙」って何? あなたの暮らしとの関係を解説
初めて選挙権を得た皆さまにとって、選挙は少し遠い世界のことのように感じられるかもしれません。国政選挙についてはニュースなどで耳にする機会があるかと思いますが、実は私たちの暮らしに一番身近な選挙があるのをご存知でしょうか。それは「市町村議会議員選挙」です。
この選挙は、皆さんがお住まいの「市」や「町」、「村」の未来を決める非常に大切な機会です。しかし、「具体的にどんな選挙なの?」「私たちの生活とどう関係があるの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、市町村議会議員選挙の基本的な仕組みや、そこで選ばれる議員の役割、そしてそれが皆さまの暮らしにどう関わってくるのかを、初めて政治に触れる方にも分かりやすく解説いたします。この記事を通して、一番身近な選挙への理解を深め、政治参加の一歩を踏み出すきっかけにしていただければ幸いです。
市町村議会議員選挙とは?
市町村議会議員選挙は、皆さんがお住まいの市、町、または村の「議会」で活動する議員を選ぶための選挙です。原則として4年に一度行われます。
- 市町村議会とは 市町村議会は、皆さんの街の運営に関わる重要な決定を行う機関です。市町村の首長(市長、町長、村長)とともに、街の課題や将来について話し合い、様々なことを決定します。言わば、街の「意思決定機関」の一つです。
市町村議会議員にはどんな役割がある?
市町村議会議員は、皆さんの代表として議会で活動します。その主な役割は以下の通りです。
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議決(ぎけつ) 市町村の運営に関する重要な事項を決定することです。例えば、皆さんが納める税金の使い方(予算)を決めたり、街のルールとなる「条例(じょうれい)」を新しく作ったり、変えたりします。その他にも、大きな工事の契約や、街の重要な計画を承認するかどうかなどを話し合って決定します。
- 【用語解説】条例(じょうれい) 地方公共団体(都道府県や市町村)が、その地域内で適用されるルールとして独自に定める法律のようなものです。国の法律と異なり、地域の実情に合わせたルールを作ることができます。
- 【用語解説】予算(よさん) 市町村が1年間でどれくらいの収入(主に税金など)があり、それを何に、どれだけ使うかという計画のことです。議会がこれを承認することで、街の運営が成り立ちます。
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調査・検査 首長が行う街の行政が、正しく行われているか、効率的に行われているかなどをチェックします。必要に応じて調査を行ったり、書類を検査したりして、行政の透明性を高める役割を担っています。
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請願(せいがん)・陳情(ちんじょう)の審査 市民が、街の行政や議会に対して要望を伝える方法の一つに「請願」や「陳情」があります。議会は、市民から提出されたこれらの請願や陳情を受け付け、内容を審査して採択するかどうかを決めます。採択された請願は、街の行政を動かすきっかけとなることがあります。
- 【用語解説】請願(せいがん) 市民が、国や地方公共団体に対して、特定の事柄に関する措置を求めることです。請願は、紹介議員(議会内でその請願を提出する議員)が必要です。
- 【用語解説】陳情(ちんじょう) 請願と似ていますが、紹介議員が必要ない場合が多いです。請願と同様に、行政や議会への要望を伝える方法です。
市町村議会議員選挙の仕組み
市町村議会議員選挙は、基本的に以下の仕組みで行われます。
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選挙区(せんきょく) 議員を選ぶ単位となる地域のことです。市町村全体を一つの選挙区とする場合もあれば、人口などに応じていくつかの地域に分けて選挙区を設ける場合もあります。
- 【用語解説】選挙区(せんきょく) 議員を選ぶ際に、有権者が投票を行う地理的な区域のことです。選挙区ごとに定数(何人当選するか)が決められています。
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定数(ていすう) その議会に何人の議員がいるか、という人数です。市町村の規模によって定数は異なります。
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選挙制度 多くの市町村議会議員選挙では、「大選挙区制(だいせんきょくせい)」が採用されています。これは、一つの選挙区から複数の議員が選ばれる仕組みです。
- 【用語解説】大選挙区制(だいせんきょくせい) 一つの選挙区から2人以上の議員を選ぶ選挙制度です。有権者は候補者名(または政党名)を投票用紙に記入し、得票数の多い順に、選挙区の定数に達するまで候補者が当選します。
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投票方法 投票用紙に、投票したい候補者の氏名を記入します。
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当選の仕組み 選挙区ごとに決められた定数の範囲内で、最も多くの票(得票)を得た候補者から順に当選が決まります。
なぜあなたの暮らしに関係するのか
市町村議会議員選挙が皆さんの暮らしに身近である理由は、そこで決定される事柄が、私たちの生活に直接的な影響を与えるからです。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 行政サービスの質と方向性: 皆さんが利用する図書館の開館時間、公園の整備計画、ゴミの収集方法、高齢者や子育て支援サービスの充実度など、身近な行政サービスの多くは市町村の議会で決定された予算や条例に基づいて行われています。
- 街のインフラ: 道路の補修、上下水道の整備、公共施設の建設や維持管理など、街の基盤となるインフラに関する計画や費用も議会で話し合われます。
- 税金の使い道: 皆さんが間接的に納める税金(住民税など)が、どのように街のために使われるのかをチェックし、その使い道について意見を反映させるのが議員の役割です。
もし、皆さんの街に「もっと緑を増やしてほしい」「通学路をもっと安全にしてほしい」「図書館にこういう本を置いてほしい」といった要望がある場合、その実現には議会の決定が不可欠です。市町村議会議員選挙で、皆さんの暮らしや街の将来について真剣に考え、行動してくれる議員を選ぶことは、皆さんの生活の質の向上に直結するのです。
市町村議会議員選挙の投票方法と注意点
市町村議会議員選挙での投票方法や手続きは、他の選挙(国政選挙など)と基本的な流れは同じです。
- 選挙期日(投票日)に投票所へ行く。
- 投票所入場券を持参する(無くしても、投票所係員に申し出れば投票できる場合があります)。
- 投票所で本人確認後、投票用紙を受け取る。
- 投票記載台で投票したい候補者の氏名を記入する。
- 投票箱に入れる。
投票日に行けない場合は、「期日前投票」や「不在者投票」といった制度を利用することも可能です。これらの詳細な手続きについては、別の記事で解説しておりますので、そちらもご参照ください。
候補者や政党を知るには?
市町村議会議員選挙に立候補している候補者や、候補者が所属する(または推薦を受ける)政党について知るためには、いくつかの情報源があります。
- 選挙公報: 候補者の経歴や政策、考え方などが掲載された冊子です。各世帯に配布されるほか、市町村の選挙管理委員会のウェブサイトなどでも見ることができます。
- 選挙運動: 候補者による街頭演説、個人演説会、選挙事務所での活動など。
- インターネット: 候補者の公式ウェブサイトやSNS、政党のウェブサイトなど。
誰に投票するかを決めるためには、これらの情報を参考に、それぞれの候補者が街の課題についてどう考えているか、どのような政策を実現しようとしているかなどを比較検討することが大切です。
まとめ
市町村議会議員選挙は、皆さんの日々の暮らしや、これから皆さんが生活していく街の未来に最も直接的に関わる選挙です。この選挙で選ばれる議員の活動や判断が、皆さんの身近な環境や行政サービスの質を左右します。
「政治は難しそう」「自分の一票で何が変わるのだろう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、市町村議会議員選挙においては、皆さんの関心事がそのまま街の課題につながっていることが多く、ご自身の声や考えを反映させる機会として、非常に重要です。
まずは、お住まいの市町村でどのような選挙が行われるのか、そしてどのような候補者がいるのかに少し目を向けてみることから始めてはいかがでしょうか。あなたの街の未来を、あなた自身の目で選び取るための第一歩となるはずです。
より詳しい投票の手続きや、候補者の情報の集め方については、本サイトの他の記事もご活用ください。