初めての選挙、政治ニュースでよく聞く「世論調査」って何?仕組みを分かりやすく解説
政治や選挙に関するニュースを見ていると、「最新の世論調査では、〇〇内閣の支持率は〇〇パーセントでした」「次の選挙で、〇〇党は〇〇議席を獲得する見込みです」といった言葉をよく耳にするかと思います。この「世論調査」とは一体どのようなものでしょうか。
政治にあまり詳しくない方にとって、「世論調査」と聞いても、それが自分の生活や選挙とどう関係するのか、あるいはどうやって行われているのか、よく分からないと感じるかもしれません。しかし、世論調査の基本的な仕組みを知っておくと、ニュースがより分かりやすくなり、政治や選挙について考える際の参考になることもあります。
この記事では、世論調査とは何か、どのように行われるのか、そして選挙とどのような関わりがあるのかを、政治や選挙の知識が全くない方にも理解できるように、分かりやすく解説していきます。
世論調査とは何か?何のために行われる?
まず、世論調査とは何でしょうか。簡単に言うと、多くの人々の考えや意見を調べ、その傾向を把握することを目的とした調査です。テレビ局や新聞社といった報道機関、あるいは政府などが実施しています。
では、何のために世論調査を行うのでしょうか。主な目的としては、以下のような点が挙げられます。
- 国民の意見や関心事を知るため: 特定の政策や社会問題に対して、人々がどのように感じているか、何を求めているかを把握します。これは、政府や政党が政策を検討したり、議会で議論したりする際の参考資料の一つとなります。
- 選挙における人々の支持状況や投票行動の傾向を知るため: 選挙が近づくと、どの政党や候補者がどのくらいの支持を得ているか、人々は何を重視して投票先を決めるか、といった調査が行われます。これは、選挙の行方を予測する際の重要な情報となります。
- 社会の動向や変化を捉えるため: 人々の意識や価値観が時間とともにどのように変化していくかを継続的に調べることで、社会全体の動向を理解する手助けとなります。
世論調査は、このように社会や政治の「今」を知るための一つの手がかりとして活用されています。
世論調査はどのように行われる?
世論調査は、国民全員に意見を聞くわけではありません。それでは時間も費用も膨大にかかってしまうからです。代わりに、国民全体の縮図となるような「一部の人々」を選んで調査を行います。この「一部の人々」のことを「標本(ひょうほん)」と呼びます。そして、標本全体の意見から、国民全体の意見を推測するのです。
では、この標本はどのように選ばれるのでしょうか。世論調査で最も重要視されるのは、特定の意見に偏らず、国民全体の意見をできるだけ正確に反映するような標本を選ぶことです。そのため、多くの世論調査では「無作為抽出(むさくいちゅうしゅつ)」という方法が用いられます。
- 無作為抽出: これは、調査対象となる人々を、統計学的な手法を使って、意図的に誰かを選ぶのではなく、偶然に、かつ公平に選ぶ方法です。例えば、電話調査であれば、コンピューターでランダムに電話番号を生成してかけたり、郵送調査であれば、住民基本台帳などからランダムに住所を選んだりします。これにより、調査を行う側の意図や偏りが標本に反映されることを防ぎ、より信頼性の高い結果を得ようとします。
調査の方法としては、主に以下のようなものがあります。
- 電話調査: 電話をかけて質問に答えてもらう方法です。比較的短期間で多くのデータを集めることができます。
- 郵送調査: 調査票を郵送し、記入して返送してもらう方法です。回答者が自分のペースでじっくり考えられますが、回収に時間がかかったり、返送率が低かったりすることもあります。
- オンライン調査: インターネットを通じてアンケートに答えてもらう方法です。最近増えていますが、インターネットを利用していない層の意見が含まれにくいという課題もあります。
- 面接調査: 調査員が直接対象者の自宅などを訪問し、対面で質問する方法です。回答者の反応を見ながら進められますが、時間や費用がかかります。
どの方法にも一長一短がありますが、信頼性の高い世論調査を行うためには、無作為抽出によって偏りのない標本を選び、適切な方法で調査を行うことが重要です。
世論調査の結果の見方と注意点
世論調査の結果を見る際には、いくつかのポイントを知っておくと役に立ちます。
- 数字は「全体を推測したもの」である: 世論調査の結果は、あくまで限られた標本から得られたものであり、国民全体の意見そのものではありません。そのため、「支持率〇〇パーセント」という数字は、国民全体の意見を統計的に推測した値であるということを理解しておく必要があります。
- 「標本誤差(ひょうほんごさ)」とは?: 無作為抽出で標本を選んでも、標本が国民全体の意見と全く同じになるわけではありません。標本の選び方によって、多少のずれが生じます。このずれのことを「標本誤差」と呼びます。信頼性の高い調査ほど、この誤差の範囲が小さくなるように設計されています。調査結果が発表される際には、「±〇パーセント」といった形で誤差の範囲が示されることもあります。
- 調査方法や対象を確認する: どのような方法(電話、郵送など)で、誰を対象に(成人全体、特定の年齢層など)、どのくらいの人数に(サンプル数)調査を行ったかを確認することも大切です。サンプル数が少ない調査や、特定の層に偏った調査は、国民全体の意見を正確に反映しているとは限りません。
- 質問の仕方にも注目: どのような質問の言葉遣いで、どのような選択肢が提示されたかによって、回答は変わる可能性があります。誘導的な質問や分かりにくい質問で行われた調査の結果は、そのまま受け止めず、慎重に見る必要があります。
世論調査の結果は、あくまで現時点での国民の意見の「傾向」を示す参考情報の一つとして捉えることが重要です。「この調査ではこうなっているから、必ずこうなるだろう」と断定的に受け止めるのではなく、「現時点では、このように考える人が多いようだ」という程度に理解しておくのが良いでしょう。
選挙と世論調査の関係
選挙が近づくと、特に世論調査の結果が注目されるようになります。
- 選挙の情勢を知る手がかり: どの政党が優勢か、どの候補者がリードしているかなど、選挙の現時点での情勢を知るためによく利用されます。メディアが選挙期間中に発表する情勢調査も、世論調査の一種です。
- 投票行動への影響?: 世論調査の結果が報道されることで、「勝ち馬に乗りたい」「負けそうな候補には投票したくない」といった心理が働き、投票行動に影響を与える可能性も指摘されています。このような影響を避けるため、選挙期間中の特定の時期には、特定の種類の世論調査結果の公表が制限される国もありますが、日本では現時点ではそのような法的規制はありません。
選挙前の世論調査は、あくまで「現時点での調査結果」であり、投票日までの期間中に人々の意識や状況は変化する可能性があります。また、回答者が必ずしもその通りに投票するとは限りません。世論調査の結果は、数ある情報の一つとして参考にしつつ、最終的にはご自身で候補者や政党の政策、人柄などをよく検討して、投票先を決めることが大切です。
まとめ
世論調査は、国民の意見や社会の傾向を知るための一つの重要な手段です。特に選挙が近づくと、その結果がニュースで大きく取り上げられます。
世論調査の結果は、統計的な手法を用いて「国民全体の意見を推測したもの」であり、無作為抽出などの方法で偏りをなくそうと努力されています。しかし、調査方法やサンプル数、質問の仕方などによって結果は影響を受ける可能性があるため、数字をそのまま鵜呑みにせず、参考情報の一つとして、注意深く見ることが重要です。
世論調査の結果に一喜一憂するのではなく、「現時点で国民がどのようなことを考えているのか」を知る手がかりとして活用し、ご自身の政治や選挙に関する判断材料の一つとしていただければ幸いです。
ご自身の投票先を決める際には、世論調査の結果だけでなく、候補者や政党の公式サイト、選挙公報、討論会などを通じて、様々な情報を集めるようにしましょう。